税制改正大綱を語る

憲法の判例を勉強していたころ名前にインパクトのあった判例をあげるとすればこの3つだろう。

苫米地(トマベチ)事件,どぶろく裁判,サラリーマン税金訴訟だ。

後2者はそれぞれ酒税法,所得税法が問題となったいわゆる税務訴訟だ。

サラリーマン税金訴訟はいわゆる大島事件と呼ばれるもので所得税法の

課税規定が自営業者に比べて給与所得者に不利であることを理由に

憲法14条の法の下の平等に反するとして課税処分の取り消しを求めたものだ。

(最判昭60.3.27民集39.2.247)参考http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E7%A8%8E%E9%87%91%E8%A8%B4%E8%A8%9F

確かに事業所得者は何でも領収書を切ろうとする姿を見かけることがあり,

毎月源泉徴収されている給与所得者からは,このような行動をとっている

事業者に対し不公平を感じるという国民感情は理解できなくもない。

最高裁は,所得税法の必要経費の控除について事業所得者等と給与所得者との間に設けた

前記の区別は合理的なものであるとして、憲法一四条に違反しないと判断した。

そして,所得の捕捉の不均衡の問題は、原則的には、税務行政の適正な執行により

是正されるべき性質のものであって,捕捉率の較差が正義衡平の観念に反する程に著しく,

かつ,それが長年にわたり恒常的に存在して租税法制自体に基因している

と認められるような場合であれば格別,,,,,そうでない限り,

租税法制そのものを違憲ならしめるものとはいえない」と判断した。

要するに,課税措置が国民に平等原則に違反するか否かは

「捕捉率の較差が正義衡平の観念に反する程に著しく存在するか否か」

という点で判断するということらしい。

それにしても,最高裁判所まで国と戦い給与所得者の思いを代弁した大島氏に敬意を表したい。

さて,前置きが長くなったが,今日は平成23年度の税制改正大綱に関するコメント。

12月12日3面,経済より

「高所得者に負担集中」「個人課税見直し 増税相次ぐ」「相続税 基礎控除4割圧縮」

来年度の法改正で相続税の基礎控除額の減少がおそらく最も注目を集めていると言えるだろう。

これまでは,基礎控除が5000万円×(相続人数×1000万円)だったので

相続税何て関係ないぜ,と言っていた人たちもこれからは,相続税の支払義務が生じる。

とはいっても,それもやはり,相当額の相続財産がある方にしか関係のない話で

世の中の大多数の人間はあまり関心がない。

とにかく,来年度の税法の法改正は政府の税収を増やすため,

高所得者への負担を増加させることと,高すぎる法人税率を引き下げることにより

国内企業の海外への拠点移転を食い止め,外国企業の参入を促そうとするのが柱のようだ。

今回の法改正では世の高所得者層は狙い撃ち的に税負担が重くなる方向に行く。

このような法改正は,消費税増税に比較すると国民の理解を得やすい。

相続税の支払い義務のある層の人数がかなりの少数(5%以下)であるからだ。

ある意味でここではお金持ちが,マイノリティとしていじめられている。

幾ら相続税の控除額の減額に反対してみたところで,世論が動くことはないだろう。

お金持ちが,今回の税法改正は金持ちいじめだ,不平等だ,と訴えてみたところで,

それに共感する世論が現れるはずがないからだ。

それにしても,相続税の基礎控除の圧縮に反対する声は不思議なくらいに聴こえてこない。

これは,金持ちケンカせず,ということが理由なのだろうか(たぶん違う)。

はっきりしたことは分からないが,おそらく,基礎控除額が小さくなったとしても

やはり相続税とは無縁の人間が大多数であるからかもしれない。

または,相続財産なんて残したくない,国の財政へ還元したいとの思いが

高齢者にあるからだろうか(これもたぶん違う)。

政治家からも,基礎控除額引き上げに反対する声はあまり聴こえてこない。

基礎控除額の減少は許せん,と政治家が大声で言ったところで,

「あなたのおうちは2代に渡って議員でさぞ相続財産がおありなのですね」,

「議員年金たっぷりもらうと相続税が莫大になりますわね」,

と国民に思われるだけなので議員の先生方も,控除額の圧縮に向けた法改正には反対しないようだ。

相続税を課される富裕層が,相続税法の定めは違憲だ,課税処分は平等原則に反する,

と言ってみたところで,「プチ富裕層税金訴訟」という名前がつくことがあったとしても

およそ,憲法14条に違反するとの判断は出ないだろう。

今回の相続税法の改正によっても,相続税の捕捉率の較差が

正義衡平の観念に反することには当然ならないからだ。

ちなみに,どぶろく裁判と言うのは免許を取らずに趣味で自家用に

どぶろくを作っていた人が酒税法違反で罰金刑に処せられた事件である。

この事件は国民の幸福追求権(自家で発酵酒を作る権利)が問題となったものだが,

最高裁は原告の主張を認めずに,結局罰金刑に処せられた。

この事件もなかなか素敵な裁判だと思う。

参考http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%81%B6%E3%82%8D%E3%81%8F%E8%A3%81%E5%88%A4

さて,もう一つのトマベチ事件というのはどういう事件だったか。。

響きだけしか思い出せない。あーもうこんな時間だ。寝なくては。

タツゾー

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