月別アーカイブ: 3月 2011

彼女は関係ない!

現在,地震による法律問題が取りざたされている。例えば,建物倒壊による借地借家の法律問題,貸家の修補,マンションの建替え,土地の境界の復元,倒壊した廃材や自動車の所有地からの撤去の可否,方法,出勤不能時の休業補償,労働災害の問題,内定の取り消しなどの労働法律問題。未曾有の震災で弁護士は色々な質問を受けるが,平時の法律適用を話してもその通りにならないことも予想され,回答は極めて困難である。政府見解などを待つ必要のあるもの立法化による解決が予想されるものなど即答できないものは回答は保留とせざるを得ない。民事上の法律問題にもっぱら関心があつまっているが,震災により刑事手続にもさまざまな影響があるようだ。 本日の日経は夕刊15面(社会)から 容疑者十数人を釈放 震災数日後「身柄の安全優先」 福島地検いわき支部が震災の影響で勾留中の被疑者十数人を処分保留で釈放していたことが判明したという。 理由は「震災の影響で容疑者の身柄の安全確保や被害者からの聴取が困難となったため」だという。対象者は比較的軽微の罪名のいわき支部管轄の勾留中の被疑者で,震災発生数日後に一斉に釈放されたという。 被疑者が釈放されたことに関して治安上の懸念もあるかもしれないが,関係者の調べができないことには,処分を下すことができないので早期の釈放が合理的だ。処分保留というのは,起訴しないことを決定したものではないが,多くの場合事実上事件は終了したと言える。処分は保留されているので釈放されても気は休まらないだろう。 今回の大震災の影響で今後このような「処分保留釈放」という恩赦ともいうべき措置が増えることが予想される。 一方で,多くの住居が被災で倒壊したことにより勾留の要件である「定まった住居がない」「逃亡のおそれ」が容易に認められてしまうことも考えられる。 いまはただ,放射性物質の拡散による避難対象地域が広がらないことを祈るのみだ。なお,処分保留とされた者の中には,嫌疑不十分の者や事案警備でどちらにしても釈放とされた者も相当数いたものと思われる。 ところで,判例法理で「事情変更の原則」というものがある。これは民法の教科書の最初の方に説明があるのだが,実際にこの法理が適用される場面はまれであると考えられていた。 すなわち,契約時にまったく予想できず当事者の責任によらない急激な社会事情の変動が生じ,当初の契約を維持することが信義誠実の原則に反し公平に反するような場合には契約内容を変更,修正することを認めるという原則で,バブル崩壊に関連する紛争でこの法理が主張されることがあったようだが実際にこの法理を認めて事件が処理されたことはほとんどない。 今回の震災に派生してこの事情変更の原則の出番がそれなりに出てくるのではないかと思う。 今回地震の関係で処分保留釈放になったのは原発に近い福島地検いわき支部管轄の警察署に勾留されていた被疑者達。 元アイドルの小向美奈子が3月18日に処分保留で釈放されたのはおそらくは関係ない。 タツゾー

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蒲田高免職

今日は仕事で蒲田に行ってきた。 本日の日経は31面(社会)より。 茶髪やピアスで判断 入試点数改ざん、不合格に 都立高、当時の校長免職 東京都教育庁は都立蒲田高校が2007年、2008年度入試の際に茶髪、ピアスをした外見の受験生21名について点数を改ざんして不合格にしたことを発表したという。教育t庁によれば、この点数改ざんは校長の指示により行われたとのこと。その方法は、願書及び試験当日の様子から頭髪、服装、態度に問題があると判断した受験生をリストアップし、対象者に関し、面接や小論文などの採点方式に裁量性のある試験において点数改ざんをしたという。1000点満点中154点引かれた受験生もいたとのことで、不合格となった受験生の怒りは収まらないと思われる。問題の当時の校長は懲戒免職処分となったとのことだが、職権濫用もはなはだしく、刑法の公務員職権濫用罪による立件もありうるのではないかと思う。 刑法第193条   公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮を処する。 公立高校に入学する権利は、能力に応じた教育を受ける権利を定める憲法26条により保障されている。したがって合格者に関し点数改ざんを行い不合格としたこの校長の処分は、職権濫用罪における「権利行使の妨害」といえるし、この校長の指示によって生じた害悪は多大で、かなり悪質だ。校長は国民全体の奉仕者であることを忘れているだけでなく公立高校を私物と勘違いでもしたのだろうか。 ちなみに懲戒免職というのは公務員が受ける懲戒処分で最も重いもの。民間の企業では懲戒解雇に相当し、退職金の受給資格も失うことになる。 なお、新聞記事によれば蒲田高校は、受験生と保護者に謝罪をし、意向を確認して対応するとのこと。「対応」というのは、特別入学が認められたりするのだろうか。個人的には、この改ざんで不合格とされた受験生が、入試の合格を前提として蒲田高校に在学できることの地位を確認する訴訟が提訴できるかという問題(つまり高校入試の合否につき裁判所が審査することのできる「法律上の争訟」といえるか)について興味があるところだ。 蒲田の町にいた茶髪の女子高校生たちを眺めながら、自分が高校のころまで「蒲田」を「カマタ」ではなく「カバタ」だと勘違いしていたことを思い出した。 タツゾー

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みんなちがって、みんな愛

今日は弁護士会の仕事で元トップアスリートの方のインタビューをさせていただいた。現役時代からチャリティー活動をされていた方だったが、今回の地震津波被災者のために現在も積極的に活動をされているようだ。現役を引退しても、スポーツを通して社会貢献ための活動をおこなう情熱あふれる姿に、あまりスポーツには興味のない私も心打たれてしまった。 本日の日経は29面(社会)より。 イレッサ 国にも責任  副作用情報が不十分 東京地裁が賠償命じる 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる死亡患者の遺族が輸入販売会社アストラゼネカと国に対し損害賠償請求を求めた訴訟で東京地方裁判所は23日に、国と製薬会社に合計1760万円の支払いを命じた。 このイレッサに関する訴訟に関しては興味深い法的論点が数多く存在する。 第一に、輸入販売を行った製薬会社が販売した治療薬について製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償責任が認められている。この点については、今年2月に大阪地裁でもイレッサについて「副作用の注意喚起は不十分で、製造物責任法上の欠陥があった」と判断され、製薬会社に賠償責任を認める判断をしていた。なお、この訴訟における、副作用の注意喚起の不十分性という場合の注意喚起というのは、医師への情報提供という意味である。 PL法のPLとはProduct Liabilityを意味する。よく耳にするこの法律は、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」(PL法1条引用)平成6年施行の比較的新しい法律だ。PL法は、製造又は加工された製造物に「欠陥」(製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)があって、引き渡した製造物の「欠陥」により他人の生命、身体又は財産を侵害したときに製造業者に過失の有無を問わず損害賠償責任を認めている。 この訴訟では、PL法第4条1号の免責事由が争点となっていた(そのほかにも因果関係などの問題もある)。ちなみにPL法の条文  第四条  前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。  一  当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。  二  当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。  大阪訴訟の原告団が製薬会社に控訴断念を申し入れるなどの活動をしており、東京訴訟に関しても製薬会社も国も控訴を検討しているとのことで今後の動向が注目される。 第二に、製薬会社だけではなく国にも損害賠償責任を認めたこと。イレッサについて2002年7月に世界で初めて輸入販売を承認した国が、副作用情報を添付文書の「警告欄」に記載するか致死に至る危険性を添付文書に記載するよう製薬会社に行政指導しなかったことが国家賠償法上、違法と判断された。今年2月の大阪地裁判決では、医療機関向け添付文書に副作用の注意喚起が十分にされているかについて、治療薬の警告欄への記載について行政指導をするなどしてなかった国の対応は「規制権限の行使が万全ではなかった」と認めたが、「死亡を含む重い副作用の危険が具体化すると高い可能性では認識できず、当時の医学、薬学的知見の下では著しく合理性を欠くとは言えない」として過失を認めず国に対する国家賠償法に基づく責任は否定していた。 3月23日の東京地裁では、国は、薬事行政上、安全確保の十分な措置を講じていないとして、国に国家賠償法上の違法を認めたもので画期的判断と言える。 提供する物自体の安全性ではなく製造者による安全性に関する情報提供の方法、国の行政指導の仕方(というかそれを適切に行わなかった国の対応)について法的責任が認められたということに、強い衝撃を感じている。 なお、注意したいのはこの東京地裁の判決は、イレッサという薬が有害で欠陥のある薬だと認めたものでは全くなく、輸入販売した製薬会社による副作用事態の告知方法に安全性が欠けていること、国の指導体制の不十分性が違法と判断されたということだ。現在もイレッサは広く服用されており、高い効能があることは世界的に認められている。これらの訴訟は、決して「夢の新薬」と呼ばれたこの薬の有用性を否定しているわけではない。 ところでいま、23時になろうとしている。これから、近所のスナックに行く。「よくもこのご時世に遊べるな」というお叱りもあるかも知れないが、スナックのママはがん闘病中のご家族を支えるため、もともと暗いお店の電気をさらに薄暗くして働かなくてはならない。飲食店関係のお店の経営も心配な今日このごろ。って人の心配をしている場合かっ! 志の高い愛情あふれるトップアスリートのお話を聞いて、もっと私も社会貢献をしなくてはいけないと感じている。やり方は人それぞれ違って構わないんです。 タツゾー

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