私が脳死状態になったら

年の瀬なので、正月に田舎に帰る前に散髪に行った。
私は小さいころから自分の髪を切るのが好きで、小学校のころ失敗して泣きながら床屋に行って直してもらった思い出がある。もう20年は前の話だ。
そんな私も、この数年は時々朝の髪の毛のセットとともに髪を切るのを習慣としていたので、かなり腕前は上がったと思う。
美容師にこのことを話すと、「でもやっぱり後ろは切れないでしょう、時々は美容院来ないとですね」と言われることが多いのだが、今日行った美容院の美容師は反応が他の店と異なった。
「自分でちょくちょく切っているので、しばらく美容院行っていません」というと、美容師は、髪を眺めて「お上手ですね」というのだ。石の上にも3年というが、私の調髪技術もプロが見ても上手いと言われるほどに向上したのかと、失敗して泣きながら床屋に行った小学校時代を思い返し、感慨深くなる。

というくだらない近況報告は終わりにして、本日は30面(社会)から。
臓器移植「望ましい」3割  欧米諸国の半分程度 国機関が調査

日本人は脳死後の臓器移植について望ましいという意見の人が34パーセントで欧米諸国に比べると(60パーセントから80パーセント)かなり低い。とはいっても、日本人の54パーセントは臓器移植一般について「まあよい」と考え、合計約87パーセントは容認派だという。また、反対派は8パーセントで若干欧米諸国に比べて高いようだ。
また日本人は約3割が脳死という状態がどのような状態をいうのかわからないと回答しており、臓器移植に対する国民の関心が若干低いということがわかる。従来、人の死というのは、1 心拍の停止 2 肺臓呼吸の不可逆的停止 3 瞳孔反応消失という三兆候で判断されるものであったのだが、臓器移植法6条は、「回復不可能な脳機能の喪失」という状態を「脳死」として脳死した者の身体も「死体」に含めている。
臓器移植法というのは平成9年に成立した法律であるから、それほど目新しい法律ではないのだが、その施術例がそれほど多くはないため、国民が身近に感じることはないのだろう。しかし、平成21年の改正で臓器移植に関して移植者(ドナー)の意思表示の方法や、臓器摘出に関する要件が変容しており、我々はもう少し臓器移植や移植医療に関して身近な問題として考えても良いのではないかと思う(私も含めてなのだが)。
ところで、私が先日見たアルノー・デプレシャンの「クリスマス・ストーリー」というフランスの映画はまさに移植医療の問題を扱っていた。
平成21年の改正臓器移植法によれば、自ら生前に臓器提供に関する明示の意思表示をしていなくても、遺族による意思表示によっては、脳死後の臓器を第三者に提供されてしまうことがありうる(本人意思不明でも遺族の書面による承諾で摘出が可能となっている)。
ところで、私は先日初めて自分の保険証の中に「意思表示欄保護シール」というものがあるのを発見した。そして保険証の中をよく読むと、臓器提供意思表示欄なんてものがあるではないか。法は、国・公共団体に、臓器提供の意思表示が従前の臓器提供意思表示カード(ドナーカード)だけでなく運転免許証や医療保険被保険者証にも記載できることを周知させる措置などの施策を講じるための努力義務を課している。ドナーカードだけでなく保険証などにこのような臓器提供意思表示欄がつくようになったのは臓器移植法3条の「国及び地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な処置を講ずるよう努めなければならない。」という要請に基づくものだ。ドナーカードだけではなく保険証などにもこのような欄ができたのは政府がまさに臓器移植にかんして啓蒙活動を行っているということだろう(ついでに言えばこの記事も移植医療に関して私が行うささやかな啓蒙活動だ)。

私の保険証の臓器提供意思欄には大まかにいうとこんなことが記載されている。
1 脳死後か心臓停止後いずれでも移殖のため臓器を提供します。
2 心臓が停止した時に限り、移殖のために臓器を提供します。(脳死の場合には提供しない)
3 臓器を提供しません。
また、提供したくない臓器がある場合にその臓器にチェックする項目もある。

改正法により、3の明示の臓器移植拒否の意思表示がない限り、遺族の承諾により自分の臓器が提供されることになった。多くの保険証にはこのような意思表示欄が設けられているのだろうが、今日の日経新聞の脳死に関する国民の認識度の低さから推測するには、意思表示欄に何らかのチェックをし、臓器提供に関する意思表示をしている国民はすくないのではないかと思う。
 
おそらく、臓器移植なんて自分から生前に提供しますといわなければ、されることはないと考えているかたが多いのではないかと思うが(そしてそれが常識的な感覚ではないかとおもうのだが)、この意思表示欄に何のチェックもしなかった場合には自分が脳死となった時に、自分の臓器が第三者に提供されることがあることを私たちは意識する必要がある。
とはいえ、私もまだ臓器移植の提供意思表示欄にはまだ何も記載していないから、これからは保険証が変わるたび毎度記入をしようと思っている。ちなみに保護シールを貼るか否かは各人の自由だが、私はおそらく貼ると思う。
将来、私が脳死状態になり、家族のだれかがそのシールをはがす日がくるかもしれない。その時に備えて意思表示をしておくことは、遺族に深刻な決断をさせることが回避できるのでとても有益だと思う。では、私はシールの下にどんな意思表示をしておこうか。

とりあえず「はずれ」とか書いておこうか、そうすればシールをはがした瞬間少し場が沸くかもしれない。

さて、年内最後の投稿というのにまたもこんな終わり方です。
皆様良いお年をお迎え下さい。

タツゾー

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