彼女は関係ない!

現在,地震による法律問題が取りざたされている。例えば,建物倒壊による借地借家の法律問題,貸家の修補,マンションの建替え,土地の境界の復元,倒壊した廃材や自動車の所有地からの撤去の可否,方法,出勤不能時の休業補償,労働災害の問題,内定の取り消しなどの労働法律問題。未曾有の震災で弁護士は色々な質問を受けるが,平時の法律適用を話してもその通りにならないことも予想され,回答は極めて困難である。政府見解などを待つ必要のあるもの立法化による解決が予想されるものなど即答できないものは回答は保留とせざるを得ない。民事上の法律問題にもっぱら関心があつまっているが,震災により刑事手続にもさまざまな影響があるようだ。

本日の日経は夕刊15面(社会)から

容疑者十数人を釈放 震災数日後「身柄の安全優先」

福島地検いわき支部が震災の影響で勾留中の被疑者十数人を処分保留で釈放していたことが判明したという。
理由は「震災の影響で容疑者の身柄の安全確保や被害者からの聴取が困難となったため」だという。対象者は比較的軽微の罪名のいわき支部管轄の勾留中の被疑者で,震災発生数日後に一斉に釈放されたという。

被疑者が釈放されたことに関して治安上の懸念もあるかもしれないが,関係者の調べができないことには,処分を下すことができないので早期の釈放が合理的だ。処分保留というのは,起訴しないことを決定したものではないが,多くの場合事実上事件は終了したと言える。処分は保留されているので釈放されても気は休まらないだろう。
今回の大震災の影響で今後このような「処分保留釈放」という恩赦ともいうべき措置が増えることが予想される。
一方で,多くの住居が被災で倒壊したことにより勾留の要件である「定まった住居がない」「逃亡のおそれ」が容易に認められてしまうことも考えられる。

いまはただ,放射性物質の拡散による避難対象地域が広がらないことを祈るのみだ。なお,処分保留とされた者の中には,嫌疑不十分の者や事案警備でどちらにしても釈放とされた者も相当数いたものと思われる。

ところで,判例法理で「事情変更の原則」というものがある。これは民法の教科書の最初の方に説明があるのだが,実際にこの法理が適用される場面はまれであると考えられていた。
すなわち,契約時にまったく予想できず当事者の責任によらない急激な社会事情の変動が生じ,当初の契約を維持することが信義誠実の原則に反し公平に反するような場合には契約内容を変更,修正することを認めるという原則で,バブル崩壊に関連する紛争でこの法理が主張されることがあったようだが実際にこの法理を認めて事件が処理されたことはほとんどない。
今回の震災に派生してこの事情変更の原則の出番がそれなりに出てくるのではないかと思う。

今回地震の関係で処分保留釈放になったのは原発に近い福島地検いわき支部管轄の警察署に勾留されていた被疑者達。
元アイドルの小向美奈子が3月18日に処分保留で釈放されたのはおそらくは関係ない。

タツゾー

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