渡辺恒雄球団会長に告ぐ

この数週間休みなく働いてきたので、またまたひと月ぶりの更新となってしまった。本当なら昨日ブログの更新をしたい日経記事があったのですが、全く時間が作れず今日になってしまった。

そんな本日は14日付けの日経朝刊38面(社会)より。

清武氏が賠償提訴 6200万円、巨人などを相手に

巨人のコーチ人事を巡ってナベツネ(通称 渡辺恒雄)球団会長を批判し、球団代表兼ゼネラルマネージャーなどの役職を解任された清武英利氏が13日、解任には正当な理由がないとして球団と親会社の読売新聞グループ本社、渡辺氏を相手取って、計約6200万円の損害賠償と謝罪広告を求める訴訟を東京地裁に提訴したという。一方、球団側(運営会社である株式会社読売巨人軍、親会社である株式会社読売新聞グループ本社)は、12月5日、既に清武氏に計1億円の損害賠償を求める訴訟を提起しており、これら訴訟は東京地裁で併合審理されることになるとみられている。
今回の清武氏の訴状によれば、「確定したコーチ人事は渡辺氏といえども覆すことができない」として、渡辺氏を批判しているという。

清武氏の今回の提訴は渡辺氏と読売新聞については名誉毀損の損害賠償、株式会社巨人軍については会社法339条に基づく損害賠償と名誉毀損による損害賠償と思われる。
清武氏の裁判で争点となる取締役解任に「正当な理由」がない場合の損害賠償というのは会社法で次のように定められている。

第三百三十九条(解任)  
1 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

なお、この「解任によって生じた損害」というのは、任期までの取締役報酬をさすというのが一般的な理解である。この清武氏の役員報酬額の高額性については、今日地下鉄で見かけたタブロイド誌を賑わしていたが、この点については今回は踏み込まないこととする。

そもそも、スポーツチームのコーチ人事に関して運営企業の会長(代表取締役)の介入権の有無について司法審査可能な問題なのか、さらに司法の場でそんなことを審理する必要性があるのか疑問だ。
また、この訴訟における訴状で渡辺氏を批判してどうするのかというツッコミはさておき、この清武氏の訴訟はあまり勝ち目はなく、むしろ個人の利益というよりは組織の公正性を求める客観訴訟的側面(または金持ち同士の意地と見栄の張り合い)があるようにも感じるのは私だけではあるまい。

巨人軍代表であり専務取締役であった清武氏は、
1 . 会長である渡辺氏が鶴の一声でコーチ人事に介入し、江川氏をコーチに迎え入れたことを批判する目的で独断で記者会見を開いたことが株式会社読売巨人軍における会社定款に違反し、
2. 会見内容が誤った事実に基づくもので巨人軍や読売新聞社の名誉を棄損したことが、取締役としての忠実義務に違反している
として、株式会社読売巨人軍の取締役でゼネラルマネージャー及び球団代表の役職を解任されるにいたった。
なお、株式会社読売巨人軍の親会社であり唯一の株主である読売新聞グループ本社が、清武氏を株式会社読売巨人軍の取締役としても解任したのかは、不明であるが、おそらく取締役としても解任されているものと思われる(取締役会で解任されたのは、ゼネラルマネージャー・球団代表としての地位だろうか)。

清武氏及び会見に同伴した弁護士によれば、「巨人の来季のヘッドコーチ人事を巡って渡邉恒雄球団会長が不当に介入したことについて、会社の内部統制とコンプライアンスを破った」というものであるが、ここでの「コンプライアンス」という用語の意味については各方面から様々な意見が出されている。
この会見に関していえば、少なくともコーチの人事という問題には、球団と関係のない一般人にまで公にするべき公益性はありえないし、オリンパス問題のように記者会見で暴露すべき問題とは到底いえないと思われる。そうであるとすれば、大王製紙、オリンパスという経済犯罪事例を引き合いに出した清武氏の表現の方がよっぽど渡辺氏に対する名誉棄損だろうと思う。
清武氏は今回の訴訟で謝罪広告を求めているが、渡辺氏の独裁っぷりを、だじゃれのつもりどうかはわからないが大王製紙を引き合いに出すなどして批判したのであるから、渡辺氏は反論談話にて当然対抗言論をする自由があるとだろう。さらに、これまでの報道を見る限り、少なくとも渡辺氏の発言は清武氏の名誉を毀損するようなものとは思えない。
そういう意味では、清武氏の謝罪広告の請求は明らかに無理筋な請求であると思われるし、解任に関してもこれだけ会社を批判する取締役を解任したことに正当な理由が認められるのは必至なのではないかと思われる。

騒動の後、巨人軍や読売新聞グループの担当者はことごとく清武批判に回っている。このような状況をみると、渡辺氏は独裁者であったとしても、巨人軍という会社組織のステークホルダー達からすると清武氏よりよっぽど人望が厚かったのではないかと思われる。

渡辺氏は今回の法廷闘争について最高級弁護士を10人用意しているらしいが、この事件に関してはそれほど高級な弁護士を使わずともなんとかなるのではなかろうか。この渡辺氏の姿は、ベイスターズ相手に各球団の4番打者やエース級の投手達を寄せ集めて挑むどこかの球団を見るようだ。それとも、渡辺氏は、清武氏の不当訴訟により、応訴について半端じゃない弁護士費用がかかったとして、その損害を賠償させたいのだろうか。
私が心配するのは、高級取りの選手達をあまり集めすぎるとチームワークがうまく働かず、なかなか良い結果が出ないことがあるということだ。
最高級弁護士を10人つけたという渡辺氏の心の内はよくわからないが、もしよろしければ弱小の街弁の私も渡辺弁護団にいれていただけはしないだろうか。

この事件は突っ込みどころ満載であるので、この問題については、連載で迫っていきたいと思っている。そして連載が終わる頃には、私も最高級弁護士の末席で11人目として鞄持ちくらいさせてもらえる日がくることを夢見ている。

タツゾー

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