俺にはなんだってわかるけど,大人は判ってくれない

今年に入ってからずっと雨が降らず乾燥して困っていたが,久しぶりに雨が降ってみれば,とは言いながらも雨よりは晴れのほうがいいな,と思ったりします。

さて今日の時事ネタは,東京新聞夕刊1面(社会)

児童虐待 厚労・文科省に改善勧告 総務省指摘 未通告や大幅遅れ

総務省は,保育所や小中学校で,虐待を疑いながらも児童相談所に通告しなかったり対応が不十分な事例があるとして厚労省及び文科省に改善を勧告したという。以前文科省は平成22年8月に保育所や学校に対し,虐待の確証がない場合でも児童相談所に通告するよう都道府県教育委員会に通知していたが,教育現場は「虐待の確証が得られなかったため」通告までに1ヶ月以上の時間がかかっている事例が多くあったことから今回このような異例の勧告に踏み切ったようだ。

児童虐待といえば昨夜は園子音監督のヒミズを観に行ってきた。(*今回は法律の話は一切ありません。また,適当なことを書いているので大丈夫かと思いますがネタバレだと言われても困ります)

主演の染谷将太が,実父からひどい虐待を受ける場面のある映画なのだが,染谷氏は本当に素晴らしい俳優で,演技力・運動神経・表現力すべてが群を抜いている。映画デビュー当時の窪塚をかるく超えており,前作の「嘘つきみー君と壊れたまーちゃん」の時よりもさらに成長し,素晴らしい演技だった。ちなみにこの映画には窪塚氏もでていて,なかなか光っていた。また,この映画には二階堂ふみというヒロインがいるが,こちらも凄い演技でパッチギの沢尻エリカを上回る衝撃だった。

この映画は,漫画原作のようだが,東日本大震災後の津波の被災地の姿が映され,その映像も監督の趣向と思われるいくつもの映画からの影響があって多くの漫画原作映画とは異なる魅力がある。
たとえば,主人公の染谷氏が顔に絵具(ペンキではない)を塗るところからは,「気狂いピエロ」を連想せざるを得ないし,堤防を走る15歳の少年の姿からは当然に「大人は判ってくれない」を思い出させずにはいられない。
しかし,この映画のピエロ少年はダイナマイトを持っていないし,ペンキではなくて絵具を塗っているにすぎないところ,川の堤防には終わりはなく,少年は行き止まりにぶつからないところ,そして何より「気狂いピエロ」のアンナ・カリーナならぬ二階堂ふみが最後までピエロに付き添っている点で,両作品との決定的な違いがあり,その終わり方が,商業主義で時代迎合的な嫌いはあるけれども,現代的で,感動的だ。私は,この映画は決して良い出来とも思わないが,そこかしこで自分が触れる現代日本のダークな部分(犯罪)やリアルな側面を見てしまう点で,今年上映されるであろうどの邦画作品よりも観る価値があることは間違いない思う。

「気狂いピエロ」が爆発しても,「大人は判ってくれない」のアントワーヌ・ドワネルの未来に希望が見えなくとも,観客たちは他人ごととしてその作品を自然と受け入れられた。今この日本で少年を描く映画をつくるとすればそんな終わり方はできないだろうし,もうこの国では,震災を無視した内容では現実味を欠いてしまっているとまで言えるのかもしれない。時間とともに人々の求める映画が変わるのは当然のことだから。

この映画では「児童虐待」「通り魔」「無差別殺人」が一つのテーマになっているが,恐ろしいことに,そのようなことが本当に日常的になっている。10年後はさらに酷い社会になっているかもしれない。そうすれば,もう微かな希望なんて描いても,この「ヒミズ」以上に嘘っぽくなってしまうだろう。そうしたら,もう青春映画なんて作らないほうがいいのではないか,と心配する私は少し考えがおかしいのだろうか。

オチもなくすみません。

タツゾー

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